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ロックマンシリーズ女性向け二次創作
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【求めよ、さらば与えられん】
フラッシュとブルース
与えられたものの重み
出ていないけど、ロック絡み。




その男は油断なら無い。

フラッシュマンはブルースに対して常に警戒心を解く事はなかった。たとえ彼がメタルマンとエアーマンと親しいと言えど、それはそれ、これはこれだ。
ライト製であるというだけならば、ここまで警戒はしない。問題は彼がそのライトから離反した、というところにあった。誰の意思でもなく、自らの意思でそれを行う。自分と置き換えて、それがどれだけ異常な事なのか。考えるだけでぞっとし、無いはずの肝が冷えた。
存在するはずのないロボット。それがフラッシュマンのブルースに対する認識だ。
優秀すぎる彼の電子頭脳がその矛盾に過剰に反応する。

何時だったか、直接訊ねた事があった。
何故裏切ったのかと。
答えはひどく曖昧なものだった。
お前なら分かるだろう、と彼は笑って告げた。そして去る背中はフラッシュはずっと見ていた。

分かるはずもない。フラッシュマンはそう思おうとした。
本当は分かりたくなかったのだ。
ライトの初号機が何故戦闘型だったのか。何故、彼の名を冠したナンバーズは容易に戦闘型へと改造できるのか。
抗う手段を与え続けるその訳。何に?何に抗うと言うのか。





「ブルース」

研究所の屋根の上にいた影に名を付ける。影はちらりとフラッシュマンを見、か細いメロディを奏でた。
手ごろな突起を伝い、よじ登る。兄弟であったらジャンプひとつで軽やかにそこへ辿り着いただろうが、フラッシュには無理だ。
ようやく辿り着いた彼をちらりとも見ず、ブルースは空を見上げ、口笛を吹いている。

「ブルース」

呼んでも反応を返さないが、フラッシュマンは構わず続ける事にした。聞いてはいるのだろう。

「どうして、博士達は心を与えた?」
「欲深い人たちだからだ」

口笛が止まる。含まれる棘を隠そうともしない言葉は、静けさを持って彼の口から放たれた。

「あの人たちは貪欲で強欲、そして老獪で卑怯なのさ。まるで・・・」

言葉とは裏腹に向けられた視線の柔らかさにフラッシュマンは困惑した。そして思う。これだから、彼は油断ならないのだと。

「まるで・・・俺達のよう、か?」
「分かっているじゃないか。流石、だな」
「あんたに褒められても嬉しくないね」
「そうか。それは残念だな。・・・フラッシュ。あの人たちの罪はなんだと思う?俺達に人格を、感情を与えたことか?力を与えたことか?」
「罪なんて・・・」
「そう。それらは罪じゃない」

ブルースはフラッシュマンに言い聞かせるように一呼吸置いた。
聞いてはいけないと何かが警告している。フラッシュマンはしかしその警告を無視した。

「求めよ、さらば与えられん」

謡うように呟いたのは有名な言葉だ。色々な解釈があり、捉え方によって意味は真逆になる。
求めよと言うのか、それとも求めるなと言うのか。フラッシュマンは聞かずとも分かった。

「ロボットに何かを求めさせるだなんて、酷い事だと思わないか」

まるで存在意義を試されているようじゃないか。
そう言って笑うブルースの顔は、泣いているようだった。フラッシュマンは静かに答えた。

「だからお前が生まれたのか」
「そうしてお前たちが生まれたんだよ」

これで終わりだというかのように、ブルースは口笛を吹き、再び空を見上げた。フラッシュマンもそれが分かったのだろう。背を向け、屋根の端に立った。
登るのには苦労したが、降りるのはフラッシュマンでも容易い。

「ブルース」

最後にとフラッシュマンは声をかけた。相変わらず口笛は途絶えない。

「ロックに会いに行ってやれ」

あの子の背をしゃんと伸ばしてやれるのは、お前だけだ。そう言い残し、フラッシュマンは屋根から飛び降りた。
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