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ロックマンシリーズ女性向け二次創作
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【夜明けの晩に】
クラッシュとフラッシュ
破壊工作後の短い話。静かな夜明け。

題名は“かごめかごめ”より。

今の時期だとだいたい4時頃の空の色がとても綺麗で好きです。
廃墟とクラッシュに似合うなぁ、と思う書いてみました。
あと、破壊工作後のクラッシュは静けさが似合う。格好良い。
そんな兄が好きなフラッシュさんでした。





クラッシュ。
その朱色の背中に声をかけようとしてフラッシュマンは止めた。立ち止まり目を細める。
周囲はすっかりと瓦礫の山と化し、その破壊活動の凄まじさを物語っている。確かにここに存在していた建物は今はもう無い。彼の足元に危なげに飛び出している鋭い鉄筋の切っ先や、不恰好なコンクリートの塊がその成れの果てだ。

不思議なオブジェのようだと、フラッシュマンはその建物であったものを見て思った。そうすると兄はアーティストか。自身の考えに笑う。
しかしそれはあながち間違ったものではない。
夜明けの不思議な藍色の空と、微かな光によって出来た影の描く世界はひとつの芸術作品だった。フラッシュマンはカメラを持ってきていないことを悔やんだ。任務なのだから仕方が無いが、この光景は任務でしか見ることは出来ない。代わりとばかりに自身にメモリに焼き付ける。

しかし静かな世界だ。
初めて見たのならば、フラッシュマンはクラッシュマンが機能停止していると勘違いしただろう。実際そうだった。
慌てて声をかけたフラッシュマンが見たのは、普段と少し違うクラッシュマンだった。何時もは兄に見えない幼い彼が、酷く大人びて見えフラッシュマンは内心焦った。
クラッシュマンは直ぐに何時もの幼さを取り戻して接してきたのだが、フラッシュマンのメモリにはしっかりと刻み込まれた兄の顔は、二度と見たくないとも、もう一度見たいともどちらともつかないものだ。
だからこういう時、フラッシュマンは声をかけずに間を置いてクラッシュマンを見るようになった。
フラッシュマンのうつくしい光景を愛する性質と、少しの兄への畏怖がそこにはある。圧倒的な力の発露と、残った破壊の爪あとは恐ろしくもうつくしい。
この兄の力に巻き込まれたら、きっと自分は跡形も無くなるだろうと考え、ぞくりとした。それはどこか甘さを含んでいて、そうなった時きっと自分はどこか恍惚とした表情を浮かべているのではないか、とフラッシュマンは思った。マゾヒストではないが、フラッシュマンは圧倒的な力に対すどこかしら崇拝にも似たものを抱いている。自らの弱さを自覚するが故に、純粋な力に対する憧れがある。
あの普段とは違う大人びた兄が望むのならば、全てを差し出してしまいそうでフラッシュマンは怖い。そんな事をすればきっと普段の幼い兄は酷く哀しむ。それを思うとフラッシュマンも辛かった。だから兄の顔を見たいけど、見れない。

夜明けの世界は静かだ。不思議な藍色が空を染め、微かな光が影を作る。風もなく、瓦礫の砂塵もすっかり収まっている。その中にひとり立つ兄を眺め、フラッシュマンは目を細めた。
このうつくしさをきっと兄は知らない。己の作り出した芸術は知っていても、そこに自身はいない。彼が中心にい居てこそ、この美は完成をみるのだ。いつか知る時はくるのだろうか。

日が昇る。藍色の空が少しずつ白く青くなっていく。
やはりこの光景には夜明け前が似合うとフラッシュマンは、明るくなる空に溜め息を吐いた。そしてようやく声をかける。

「クラッシュ」

振り返った顔は、光に照らされ幼く輝いていた。

「フラッシュ」
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