ロックマンシリーズ女性向け二次創作
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【それは嵐のように】
クイック→←エレキ
内に秘めた闘争心に苛まれるエレキと、なぜそれを隠すのか分からないクイック。
クイック→←エレキ
内に秘めた闘争心に苛まれるエレキと、なぜそれを隠すのか分からないクイック。
キィ、キィ。
エレキマンはそっと溜め息を吐いた。久しぶりの休暇であるが、何もする気が起きず、しかしライト研究所に居るのもどこか気まずくて外へ出た。行く宛も無く彷徨い人のようになんとなしに歩いていると、小さな公園を見つけ、誰もいないのを良い事に錆びれたブランコに腰をかけ、ぼんやりとしていた。
こんな寂しげな場所にいては、更に気が滅入ってしまいそうだ。そう思うも、エレキマンはその場から離れおしく感じていた。この侘びしさが、今は居心地が良い。
エレキマンは、本当は自分が何がしたいのかを自覚している。しかしそれは許されない事だ。自分だけではない。家族と思うロックマン達を裏切る行為でもあるのだ。
思う存分、このうちに溢れる力を使って戦いたいなどと。
工業用として生まれたはずのエレキマンに宿ったその欲求は、以前ドクターワイリーに戦闘用として改造された名残りだ。同じく改造された兄弟とも言える機体達には無く、エレキマンだけに残ったそれ。それは論理的に説明の出来る代物なのだが、エレキマンはそれを認めたくなかった。知られたくなかった。
なによりも、戦闘型として生まれた彼らに向けられる自分の秘めた思いが怖かった。
羨ましいなどと思う事は、自分を愛してくれる者達に対する酷い裏切りでしかない。
「馬鹿馬鹿しい」
この馬鹿な考えを蹴散らしたい。そう思えば思うほど、身体を動かし思う存分相対する者と戦いたいと願ってしまう。どうしようもない、悪循環だった。
それでも、どれだけ辛くとも、皆の前では見せる訳にはいかない。
だから、少しだけ。ここで一人ぼっちでいる間だけ、存分に沈む事をエレキマンは自分に許す事にした。
だからだろうか。男が近付くことを許したのは。力量差をおいても、常のエレキマンなら決して入れない間合いにその男は静かに立っていた。
「エレキマン」
「ッ!・・・クイック、マン」
名を呼ばれ始めて気がついた。反射的に警戒を高め、戦闘態勢を取る。そんなエレキマンを見つめ、クイックマンは嬉しそうに笑った。
「戦うのか。なら相手をするぞ」
誰に憚ることなく戦闘への喜びを出し、クイックマンは素早く戦闘態勢を取った。そんなクイックマンにエレキマンははっと我に返った。
「違います!私は戦わない!」
「なぜだ?お前は戦いたがっているのだろう?」
何かを恐れるような姿だ。クイックマンはエレキマンの様子を見、思った。戦闘態勢は既に解いている。今のエレキマンと戦っても、面白くなさそうだと感じたからだ。
一歩近付くと、エレキマンはブランコから立ち上がり後ずさった。逃げるものを追うのはクイックマンの本能のようなものだ。一気に間合いを詰め、その腕を取った。
「離してください!」
「何故逃げる」
「何故ですって?貴方は自分が何者か分かっていないのですか」
「分かっているさ。DWN012、クイックマンだが、それがどうした」
「そう。そして私はDRN。私は貴方の敵。貴方は私の敵。早く離してください」
「敵だというなら、戦えば良いじゃないか」
自分を敵だと言いながら、何故戦うことを恐れる。
お前の言動は矛盾している。何故、そんな泣きそうな顔をするのだ。
クイックマンは掴んだ手に力を込めた。ぎしり、とそれは軋んだ音を立てる。微かな呻き声が聞こえた。クイックマンは更に力を込めた。
その瞬間、ぱちり、と空気の爆ぜる音を聞いた。
クイックマンは手を離し、その場から飛び退いた。
頬に痛みが走る。完全に避け切れなかった拳が掠ったのだろう。
「そう、ですね。貴方は敵。敵は倒すもの。戦う相手、ですね」
「そうだ。だから遠慮することはない」
振りかぶった拳を握り締め、エレキマンは呟いた。
クイックマンが誘う。存分に戦おうと、手を伸ばす。その誘いは甘美で、思わず手を取りたくなった。
伸ばしかけた手を再び握り締め、エレキマンは力を抜いた。
「・・・できません」
「何故」
「戦う事は、嫌いです」
「嘘だな」
「嘘ではありません。・・・嫌い、ですよ」
「エレキ」
クイックマンは伸ばした手を下ろした。諦めた訳ではないのだろう。エレキマンを捉える彼の視覚センサーの光がそれを物語っている。
もう一度、名を呼ばれた。
「エレキ」
「・・・なんですか」
「戦いたくなったらいつでも相手をする」
「必要ありません」
「待っている」
クイックマンはそう言ってくるりと踵を返した。そして振り向きもせず、足早にその場から立ち去った。
その背を見送り、エレキマンはひとりごちた。
「勝手な事を」
不思議な事に先ほどまでの沈んだ気分は霧散していた。晴れやかな、とは言わないが、それでも幾分すっきりとしている。
「待っているなんて言って、連絡手段もなくどうするつもりなのでしょうね」
くすくすとエレキマンは笑い、そうして公園を後にした。
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