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ロックマンシリーズ女性向け二次創作
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【ご機嫌なメロディー】
クイック、バブル、エアー、メタル
クイック誕生後、少したってからの話。
鼻歌は音程を外すものだと教えられたメタルと、その周囲。





外は良い天気だった。洗濯物も気持ちよ良く乾いたのだろう。

メタルマンがとても機嫌良さ気に取り入れた洗濯物を畳む姿はかなりの違和感がある。気にするなと言われたのでそれについて言及はしないが、それに付随してくるものが問題だった。
クイックマンはソファに寝転び、仮想戦闘シュミレーションを行っていた。が、それに気を取られ致命的なミスをしてしまう。
あと少しで敵を殲滅出来たのに。
苛立ち紛れに勢いをつけて上半身を起こした。メタルマンは気付かないのか、それとも洗濯物に夢中なのか意識を向けることはしなかったが、同じく居間にいた二人の兄が視線を寄越す。

「どうした?」
「大人しくしてるの飽きた?」

特に意味はないのだろうエアーマンと、明らかに何かを含ませているバブルマンの言葉にクイックマンはなんでもないと返し、ソファに凭れた。
なら良いと、エアーマンは再び趣味であるメンコに意識を向けたが、バブルマンは違った。意地の悪そうな笑みをゴーグルの下に浮かべている。きっとマスクの下の口は釣りあがっているだろう。
読んでいた本を机に置き、そろりとクイックマンに近寄ってくる。そうしてクイックマンが座っている三人掛けのソファに腰を降ろした。
どうやらこの兄の好奇心と悪戯心を刺激してしまったらしい。クイックマンは内心で軽く悪態をつく。表に出さないのは、生まれてこの短期間で学んだ術だ。この兄に口で楯突こうものなら、完膚なきまでにしてやられる。クイックマンのプライドとかそういったものは粉々の消し炭にされてしまうのだ。
不機嫌に放っておいて欲しいと無言で訴えるが、それを読んであえて絡んでくるのだから、本当に性質が悪いとクイックマンは思った。残りの二人の兄や自分がストレートな分、余計にそれはバブルマンの個性として強調されていた。
実のところ、メタルマンもエアーマンもクイックマンほど真っ直ぐではないのだが、彼は細かい事は気にしないので構わないのだ。

「何に気を取られて、負けちゃったんだい?」

どうやらバブルマンにはすっかりお見通しのようである。
勿論、クイックマンは自分が何をしていたか一切伝えていない。
そもそもふらりとやって来たバブルマンは、ソファに寝転ぶクイックマンを一瞥して読書を始めたのだ。二人の間に会話は無かった。実際、クイックマンはバブルマンが何を読み、何を考えているかなどさっぱり解らない。
初めこそこの兄にはどういった機能が付いているのかいぶかしんだクイックマンだったが、もう慣れてしまった。彼のシンプルな思考回路はそれ故に柔軟だ。害を及ぼすものではないと認識したものはあっさりと受け入れる。
ただ認めてはいるが、何時かは必ず勝ってみせると言った気持ちも持ち合わせているところが、彼の彼たる所以だろう。

ちらりとバルブマンを一瞥すると、彼はおっとりと笑っているものだから、クイックマンはなんだか馬鹿馬鹿しくなってしまった。
軽く溜め息を吐き、視線を窓際に陣取る兄に向ける。バブルマンも同じようにそちらに視線をやった。

「何時もの事じゃないか」

放っておけば害は無いし、お前が気取られるような事でもないでしょ。
少しばかり棘の含まれた言葉はバブルマンの癖のようなものだ。彼はあまり真っ直ぐ言葉を語らない。どこか歪んだ物言いだが確かに愛情を感じさせるものなので、兄弟の誰も文句は言わなかった。勿論、クイックマンもだ。

「あー、まあな。あれは良いんだが。バブル、お前気にならないのか?」

お手伝いロボットのいない以上、誰かが博士の世話をしなくてはならない。だから兄弟で分担して行う。それがワイリーナンバーズの鉄則だ。
クイックマンも乗り気ではないが手伝っている。嫌だと反発したらとんでもない目にあった過去が、不承不承ながらも彼を従わせているのだ。散々痛めつけられ、数時間に及ぶ説教をされ、言葉で心の傷を抉られれば誰だって学ぶ。

「何が?」
「あのへたくそな鼻歌」

珍しく察しないバブルマンにクイックマンは肩を竦め、答えを伝えた。
どうしてロボットのくせにあれだけ音を外せるのだろう。クイックマンの聴覚センサーはあれを雑音と捉え、故に彼の集中力は乱されたのだ。

「一度気になると、どうしても気になっちゃうよねぇ。クイックは初めて聞いたのかい?」
「いや。前にも何度かな。止めろってったのにメタルのヤツめ」
「あはは。注意したんだ?意味無いよ。だってあれ、無意識のうちにやっちゃうらしいからね」
「だったらせめて音程を合わせるべきだろ」
「あー。それはもう無理みたいだよ」

ねえ、エアー。
バブルマンの呼びかけに、メンコに集中していたエアーマンが顔を上げる。

「なんだ」
「メタルの音痴は治らないよね」

ああ、あれか。と頷きエアーマンは視線をメタルマンに移した。

「まともに歌えば外す事も無いのだから、音痴と言ってやるな」
「そうなのか?」
「まあね。メタルが音を外すのは鼻歌歌ってる時だけだよ」

存外上手いもんだよ。
バブルマンが笑い、エアーマンが頷いた。
クイックマンはそうなのかと納得し、ではなぜ鼻歌だけと問うとエアーマンは顔を逸らし、バブルマンはにんまりと笑った。

「どうしてだろうね。ね、エアー」
「どこぞの馬鹿がいらん事を吹き込んだからだな」
「誰の事だ?」

クイックマンの問いに、バブルマンはそのうち会えるよと答え、エアーマンは会ったら遠慮無くトレーニングの相手をしてもらうと良いと答えた。
どうせなら壊してやっても構わんぞ、と言うエアーマンは言葉とは裏腹に楽しそうで、クイックマンはその誰かに会うのが少し楽しみになった。

会うまでその事を忘れてしたのは、クイックマンの性能上、仕方の無い事だ。
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